入居申込書には法律で決まった様式がないため、申込金の返し方、個人情報の利用目的と提供先、外国人の在留カードの確認欄は、各社が法令に合わせて自分で書き込む必要があります。この記事では、宅地建物取引業法、個人情報保護法、出入国在留管理庁と国土交通省の資料をもとに、入居申込書で見直すべき欄と、そのまま使える確認表をまとめます。
入居申込書に法定の様式はない
賃貸借契約書については、国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」を公表しています。一方、入居申込書には法律で決まった様式がありません。多くの会社は、保証会社の申込書や過去に使っていた書式を手直ししながら使っています。
様式が自由だということは、法令に合わない文言が残っていても、だれも気づかないまま使い続けられるということでもあります。とくに見直しが必要なのは次の3つの欄です。
- 申込金(預り金)の扱いを書いた欄
- 個人情報の利用目的と、保証会社などへの提供に関する同意欄
- 外国人の申込者の在留資格と在留期間の満了日を書く欄
なお、国土交通省は「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」の関連資料として、入居申込書と重要事項説明書の様式を日本語を含む14言語で公開しています。自社の書式を一から作る前に、項目の過不足を見比べる材料として使えます。
申込金は「いつでも返せる」書き方にする
返還を拒むことは宅建業法で禁止されている
宅地建物取引業法47条の2第3項は、契約の締結や申込みの撤回に関する行為のうち、相手方の利益の保護に欠けるものとして国土交通省令などで定める行為を禁止しています。これを受けた宅地建物取引業法施行規則16条の11第2号は、「相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと」を禁止行為として挙げています。
つまり、入居の申込みと一緒に申込金を預かった場合、契約が成立する前に申込者が撤回したときは、預かったお金を返す必要があります。「審査に通った後のキャンセルは返金しません」といった文言は、この規定とぶつかります。
「手付金に振り替わる」という文言も問題になる
公益財団法人不動産流通推進センターは、相談事例「賃貸の申込書に記載された『申込金が手付金に振り替わる』という文言の有効性」(2024年10月掲載)を公開しています。この事例では、契約成立までの撤回であれば返還するという記載や、契約が成立したら申込金を賃料の一部に充てるという扱いは原則として問題ないとされています。一方で、「貸主の承諾後は返金できない」「手付金に振り替わる」として撤回時に返さないことは、宅建業法47条の2と施行規則16条の11第2号に抵触するおそれがあると指摘されています。
申込書の書き方の例
申込金を預かる運用を続けるなら、申込書には次のような趣旨を書いておくと、説明と書面が食い違いにくくなります。
- 申込金は、契約が成立するまでの間、申込みを撤回されたときは全額を返還します。
- 契約が成立したときは、申込者の承諾を得て、契約時の費用(賃料など)に充当します。
- 返還の方法(振込先の確認、返還までの日数の目安)を記載します。
申込金を預からない運用にすれば、返還の手続きそのものが要らなくなります。どちらを選ぶ場合でも、口頭の説明と申込書の文言をそろえておくことが大切です。
個人情報の同意欄は、実際の流れに合わせる
書面で取得するときは、あらかじめ利用目的を明示する
入居申込書には、氏名、生年月日、勤務先、年収、緊急連絡先など、多くの個人情報が書かれます。個人情報保護法17条1項は、個人情報を取り扱うにあたって利用目的をできる限り特定することを求めています。さらに21条2項は、本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記載された個人情報を取得する場合は、あらかじめ本人に利用目的を明示しなければならないと定めています。
入居申込書は、まさに「本人から直接書面で取得する」場面です。ホームページに利用目的を載せているだけでなく、申込書の紙面や申込フォームの画面上に、利用目的を書いておくのが確実です。
保証会社への提供は、第三者提供の同意を取る
個人情報保護法27条1項は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと定めています。申込書の情報を家賃債務保証会社に送って審査を依頼する場合、保証会社は申込者と別に審査を行う事業者ですから、提供について本人の同意を取っておく必要があります。
同じ条文の5項1号は、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを委託することに伴って提供する場合は、第三者への提供に当たらないとしています。たとえば、自社の業務の一部を外部に委託する場合がこれに当たります。ただし、貸主(オーナー)や保証会社、損害保険の代理店との関係が委託に当たるかどうかは、契約の形によって変わります。申込者にとっては、どこに何が渡るのかが書いてあるほうが分かりやすいため、提供先は同意欄に列挙しておく方法をおすすめします。
同意欄に書いておく項目
| 項目 | 書く内容の例 | 根拠・考え方 |
|---|---|---|
| 利用目的 | 入居審査、賃貸借契約の締結と管理、緊急時の連絡 | 個人情報保護法17条1項・21条2項 |
| 提供先 | 貸主、家賃債務保証会社、損害保険の代理店など | 27条1項の同意を取る相手を具体的に書く |
| 提供する情報 | 氏名、生年月日、連絡先、勤務先、収入、本人確認書類の写しなど | 何が渡るかを申込者が判断できるようにする |
| 審査に通らなかった場合 | 申込書と書類の保管期間、廃棄の方法 | 22条(利用する必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努める) |
| 問い合わせ先 | 開示・訂正・利用停止の窓口 | 本人からの請求に対応できる窓口を示す |
個人情報保護委員会のよくある質問(FAQ)でも、個人データを第三者に提供する場合は、原則としてあらかじめ本人の同意を得ることが示されています。同意欄は、署名欄の近くに置き、申込者が読んだうえで署名できる配置にします。
外国人の申込|2026年6月14日からの新しい在留カード
券面から「在留期間」が消え、「在留期間の満了日」は残る
出入国在留管理庁によると、2026年6月14日から、マイナンバーカードの機能を持たせた「特定在留カード」の運用が始まりました。あわせて、マイナンバーカードの機能を持たない在留カードも、券面の記載事項を見直した新しい様式に切り替わります。新様式の在留カードの券面記載事項は、裏面にマイナンバーが書かれない点を除いて、特定在留カードと同じとされています。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 券面に記載される | 氏名、生年月日、性別、国籍、住居地、在留資格、在留期間の満了日、カード番号、有効期間の満了日、就労制限の有無、資格外活動許可の有無 |
| ICチップにのみ記録される | 在留期間、許可の種類、許可年月日、交付年月日 |
ICチップの記録は、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」で確認できます。ただし、交付年月日はこのアプリケーションでは確認できないとされています。また、特定在留カードへの切り替えは任意で、従来の在留カードは新様式の交付が始まった後も引き続き有効です。
申込書の欄をどう直すか
申込書に「在留期間( 年)」という欄がある場合、新様式のカードを持つ申込者は券面を見ても書けません。審査で見たいのは、多くの場合「いつまで日本に在留できるか」ですから、欄は「在留資格( )」「在留期間の満了日( 年 月 日)」とし、あわせて「就労制限の有無」「資格外活動許可の有無」を書けるようにしておくと、券面と同じ順番で確認できます。
国土交通省の資料で確認書類をそろえる
国土交通省の「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」には、「入居審査必要書類チェックシート」が付いています。このチェックシートには、パスポート、在留カード、勤務証明書、在学証明書、資格外活動許可書、源泉徴収票、給与明細書、納税証明書、奨学金支給証明書、預貯金の証明などが並んでいます。同ガイドラインでは、在留カードを身元確認書類として扱い、家賃債務保証業者の利用または連帯保証人を立てることを説明するよう示しています。
国籍を理由に一律に申込みを断るのではなく、在留期間の満了日、収入、保証の手段といった、ほかの申込者と同じ基準で審査できるように欄を整えておくと、説明の筋が通ります。
標準契約書とつながる項目をそろえる
入居申込書で集めた情報は、そのまま賃貸借契約書に移ります。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(連帯保証人型)」(平成30年3月版)では、頭書(5)に借主の氏名・年齢・電話番号、同居人の氏名・年齢・合計人数、緊急時の連絡先(住所・氏名・電話番号・借主との関係)を書く欄があります。頭書(6)には連帯保証人の住所・氏名・電話番号と極度額の欄があります。
申込書の段階でこれらの項目を同じ並びで集めておくと、契約書の作成時に聞き直す手間が減ります。とくに次の点は、申込書の欄を契約書に合わせておくと漏れにくくなります。
- 同居人の氏名と年齢、合計人数(標準契約書の別表第3では、出生を除く同居人の追加は貸主への通知事項とされています)
- 緊急時の連絡先と、借主との関係
- 連帯保証人を立てる場合の住所・氏名・電話番号(極度額は契約書で定めます)
- 反社会的勢力でないことの確約(標準契約書7条に対応する確約欄)
連帯保証人の極度額については、連帯保証人の極度額の記事で民法465条の2と標準契約書の書き方を整理しています。保証会社の選び方は賃貸保証会社の選び方、反社会的勢力の確認は不動産の反社チェックも参考にしてください。
入居申込書の確認表
自社の申込書を手元に置いて、次の表で1行ずつ確認してください。
| 確認すること | 見るところ | 根拠・資料 |
|---|---|---|
| 撤回時に申込金を返す文言になっているか | 申込金の欄、注意事項 | 宅建業法47条の2第3項、施行規則16条の11第2号 |
| 「承諾後は返金しない」「手付金に振り替わる」が残っていないか | 申込金の欄、裏面の約款 | 不動産流通推進センター 相談事例 |
| 利用目的が紙面や画面に書かれているか | 同意欄 | 個人情報保護法17条1項・21条2項 |
| 保証会社など提供先が具体的に書かれているか | 同意欄 | 個人情報保護法27条1項 |
| 審査に通らなかった申込書の扱いが決まっているか | 同意欄、社内の保管ルール | 個人情報保護法22条 |
| 在留資格と在留期間の満了日を書く欄があるか | 申込者欄 | 出入国在留管理庁 特定在留カードの案内 |
| 同居人、緊急連絡先、連帯保証人の欄が契約書と同じ並びか | 申込者欄、同居人欄 | 賃貸住宅標準契約書 頭書(5)(6) |
| 反社会的勢力でないことの確約欄があるか | 署名欄の近く | 賃貸住宅標準契約書7条 |
書式をどこで管理するか
申込書の文言を直しても、古い書式が店舗のパソコンや紙の束に残っていると、そちらが使われ続けます。書式は1か所で管理し、直した日と直した箇所を記録しておくと、次に法令や在留カードの様式が変わったときにも追いかけやすくなります。ウルスタくんでは、入居者と物件の情報を顧客管理とあわせて記録でき、賃貸借契約書・重要事項説明書など24種の書類の作成と電子サインにも対応しています。申込書で集めた項目を契約書の作成にそのまま使えるようにしておくと、転記の手間と書き間違いを減らせます。
よくある質問
Q1. 入居申込書に決まった様式はありますか。
法律で決まった様式はありません。国土交通省は「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」の関連資料として、入居申込書の様式を14言語で公開しています。自社の書式と項目を比べる材料として使えます。
Q2. 審査に通った後のキャンセルでも申込金は返す必要がありますか。
契約が成立する前の撤回であれば、預かった申込金を返す必要があります。宅地建物取引業法施行規則16条の11第2号は、申込みの撤回の際に預り金の返還を拒むことを禁止しています。
Q3. 保証会社に申込書を送るのに、申込者の同意は要りますか。
個人情報保護法27条1項により、例外に当たらない限り、第三者への提供にはあらかじめ本人の同意が必要です。同意欄に提供先として家賃債務保証会社を書き、署名をもらっておく方法が分かりやすいです。
Q4. 審査に通らなかった人の申込書はどうすればよいですか。
個人情報保護法22条は、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めています。保管期間と廃棄の方法を社内で決め、申込書の同意欄にも書いておくと説明しやすくなります。
Q5. 新しい在留カードで在留期間が分からないときはどうしますか。
券面には在留期間の満了日が書かれています。在留期間そのものはICチップに記録されており、出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」で確認できます。申込書の欄は「在留期間の満了日」に合わせておくと、券面のまま書いてもらえます。
Q6. 従来の在留カードは使えなくなりますか。
出入国在留管理庁によると、従来の在留カードは新様式の交付開始後も引き続き有効で、特定在留カードへの切り替えは任意です。
出典(本文で参照している資料)
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)47条の2
- 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)16条の11
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)17条・21条・22条・27条
- 個人情報保護委員会 よくある質問(個人データの第三者提供と本人の同意)
- 不動産流通推進センター 相談事例「賃貸の申込書に記載された『申込金が手付金に振り替わる』という文言の有効性」
- 出入国在留管理庁「特定在留カード交付申請について」
- 出入国在留管理庁「在留カードとマイナンバーカードの一体化Q&A」
- 国土交通省「外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居について」(ガイドライン、入居申込書の様式、チェックシート)
- 国土交通省「入居審査必要書類チェックシート」
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(連帯保証人型)」平成30年3月版
この記事は2026年10月7日時点の情報です。