国民生活センターは2026年9月16日、分電盤の点検商法に関する相談が2025年度に6,545件と、前年度(1,290件)の約5倍になったと公表しました。2026年度も7月末までで2,223件と、前年同期(1,312件)を大きく上回っています。契約当事者は70歳以上が8割を超え、契約金額は15万円以上20万円未満が最も多く、平均は約18万円です。手口は決まっています。「電力会社ですが分電盤の点検に伺います」という電話から始まり、訪問して分電盤を開け、「古い」「法律で耐用年数は15年と決まっている」「漏電したら火事になる」と不安をあおり、その場で交換工事の契約を結ばせる。賃貸住宅の分電盤は貸主の設備です。入居者がその場で交換契約をする筋合いはありません。この一点を入居者に先に伝えておくだけで、管理物件の入居者が18万円を払う場面はほぼ無くせます。本稿は、レポートの数字と手口を読み、管理会社が入居者に配る注意文の雛形、4年に1回の法定点検との見分け方、契約してしまった入居者に管理会社が8日以内にやること、オーナー報告書に足す2行までを整理します。
結論(90秒で読める)
- 国民生活センターの2026年9月16日公表によると、分電盤の点検商法の相談は2022年度14件、2023年度39件、2024年度1,290件、2025年度6,545件と3年で急増し、2026年度は7月31日までで2,223件です。2024年度は南関東に目立っていた相談が、2025年度は北関東や九州北部を含め各地に広がりました。
- 2025年度の契約当事者(n=6,039)は70歳代28.5%、80歳代43.2%、90歳以上9.5%で、70歳以上が8割を超えます。契約購入金額(n=3,250)は15万円以上20万円未満が46.6%で最多、平均は約18万円です。既に支払った後に相談した割合は3.8%にとどまり、大半は支払う前の相談です。つまり、早く止めれば止まります。
- 国民生活センターは「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」と明記しています。「法律で15年」は嘘です。電気事業法に基づく法定点検は4年に1回、無料で、点検日時は事前に書面で案内され、電話で知らせることは原則なく、点検後に調査員が交換契約を持ち掛けることもありません。
- 賃貸住宅の分電盤は建物の設備で、貸主が修繕義務を負います(民法606条)。入居者が業者と交換契約を結ぶ場面は本来ありません。管理会社が入居者に伝える一言は「分電盤・ブレーカーの交換は管理会社が手配します。訪問した業者とその場で契約しないでください」です。
- 契約してしまった入居者がいたら、特定商取引法の訪問販売に当たる場合は契約書面を受け取った日から8日以内にクーリング・オフができます(電話でアポを取ってからの訪問も訪問販売です)。8日を過ぎても、事実と違う説明で契約したなら消費者契約法の取消しが使える場合があります。管理会社は契約書の日付を確認し、工事を止め、消費者ホットライン188につなぎます。
- 管理会社が今週やるのは、注意文を配ること、自社の訪問ルールを決めて周知すること、70歳以上の入居者の戸を数えること、法定点検の案内が来たら受けてもらうよう伝えること、報告書に2行を足すことの5つです。
何が公表されたのか|件数・年代・金額
国民生活センターは2025年1月にも「『分電盤の点検に行きます』の電話から始まる勧誘に注意」を公表していました。その時点で2024年度の相談は11月末で461件、前年同期の約25倍でした。今回の公表は、その後も相談が減らず、むしろ地域を広げて増え続けていることを示すものです。数字を並べます。
| 項目 | 数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| 年度別相談件数 | 2022年度14件、2023年度39件、2024年度1,290件、2025年度6,545件、2026年度2,223件(7月31日まで) | 2025年度は前年度の5.07倍。2026年度の7月末時点は前年同期の1,312件に対して1.69倍で、まだ増えている |
| 地域 | 2024年度は南関東で目立つ→2025年度は南関東に加え北関東・九州北部を含め各地で急増 | 首都圏だけの話ではなくなった。地方の管理物件も対象 |
| 契約当事者の年代(2025年度、n=6,039) | 60歳未満7.8%、60歳代11.0%、70歳代28.5%、80歳代43.2%、90歳以上9.5% | 70歳以上が81.2%、80歳以上だけで52.7%。単身高齢の入居者が最も狙われる |
| 契約購入金額(2025年度、n=3,250) | 10万円未満9.8%、10〜15万円23.3%、15〜20万円46.6%、20万円以上20.3%、平均約18万円 | 15万円以上が66.9%。分電盤1台の交換としては高い水準で固定されている |
| 既支払額が1円以上の相談 | 2024年度67件(5.2%)、2025年度248件(3.8%)、2026年度83件(3.7%) | 96%は払う前に相談している。契約直後に止めれば戻る |
同じ日に公表された「2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況」も一緒に読んでおきます。65歳以上の相談は330,497件で前年度から25,823件増え、相談全体の37.7%です。販売形態を年齢別にみると、通信販売の割合は65〜69歳が最も高く、年齢が上がるほど訪問販売・電話勧誘販売の割合が上がり、85歳以上では訪問販売が最も多くなります。分電盤の点検商法は、この「85歳以上は訪問販売」という構図の典型です。東京都の住宅マスタープランの考え方が示すとおり、世帯主65歳以上の世帯はこれから増え続けます。管理物件の入居者が高齢になるほど、この手口の的になります。
手口は4つの事例に尽きる|電力会社・市役所・耐用年数・現金
報告書に載った4つの事例は、入口と決め台詞が少しずつ違います。管理会社が入居者に説明するときは、この4つを「うちの入居者に起きたらこうなる」に置き換えて読みます。
| 事例 | 入口と決め台詞 | 金額・属性 | 賃貸の入居者に起きるとどうなるか |
|---|---|---|---|
| 1. 電力会社を名乗る無料点検 | 突然「大手電力会社の無料点検」と来訪。分電盤を見て「古いので交換が必要」 | 約20万円。80歳代男性。1か月前に本物の法定点検で異常なしと言われていた | 本物の点検の直後でも来る。「先月点検したばかり」は断る根拠になるが、本人が覚えていないと通らない |
| 2. 市役所から依頼された業者 | 「市役所から依頼されてブレーカーの点検に行く」と電話→訪問→「古くホコリがたまって危ない。使用期限がある」 | 約12万円。70歳代女性。近所の電気工事業者に聞いて不審に気づいた | 公的機関の名前を出す。管理会社の名前を出す変種は容易に想像できる |
| 3. 法律で耐用年数15年 | 「電力会社ですが分電盤の点検に伺います」と電話。点検後「耐用年数は法律で15年と決まっている。漏電したら大変」 | 約14万円。70歳代女性。契約先の電力会社に確認して関係のない業者と判明 | 「法律で」は嘘。住宅用分電盤の使用期限を定めた法律は無い、と国民生活センターが明記 |
| 4. 現金で支払い、契約書なし | 独居の父が電話で来訪を承諾→点検後「古いので交換した方がよい」→現金約20万円、見積書・契約書なし | 90歳代男性。家族が後から気づき、減額を相談 | 書面が無いとクーリング・オフの起算日が来ない状態。家族も管理会社も気づくのが遅れる |
4つに共通するのは、入居者本人が「点検を受ける」と決めて家に入れていることです。国民生活センターのアドバイスの1つ目が「電話等で点検を持ち掛ける業者には安易に点検させない」であるのはそのためです。家に入れた後は、分電盤を開けてホコリを見せ、経年を言い、漏電と火事の話をする。専門家に見える相手にそう言われて、その場で断れる80歳代の人は多くありません。だから、断る根拠は本人の判断力ではなく「決まりごと」に置く必要があります。賃貸住宅には、その決まりごとがもともとあります。
分電盤は貸主の設備|入居者が契約する筋合いがない理由
民法606条1項は、賃貸人は賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う、と定めます。分電盤は住戸に備え付けられた建物の電気設備で、入居者の持ち物ではありません。古くなって交換が必要なら、それは貸主が計画して費用を出す修繕です。入居者が自分の負担で交換する場面は、民法607条の2が定める「貸主に通知したのに相当の期間内に修繕しないとき」か「急迫の事情があるとき」に限られます。点検に来た業者が「古い」と言った、というのはどちらにも当たりません。
つまり、賃貸住宅の入居者には「分電盤は管理会社に言う」という決まりごとが最初からあります。持ち家の高齢者は自分で判断するしかありませんが、入居者には「私の設備ではないので、管理会社を通してください」という断り文句が用意されている。管理会社がやるべきことは、この断り文句を入居者が思い出せるところに置いておくことです。「分電盤・ブレーカーの交換は管理会社が手配します。訪問した業者とその場で契約しないでください」。この1文を、入居時の書類、掲示板、年に1回の通知に入れます。
もう1つ、交換工事そのものの問題があります。分電盤の交換は電気工事士法3条2項により、第一種または第二種電気工事士でなければ作業に従事できません。入居者が貸主に無断で業者を入れて分電盤を替えると、誰がどんな資格で工事したのか貸主が把握できない設備が建物に残ります。次の入居者への引き渡し、漏電事故のときの責任、保険の扱い、いずれも貸主側が困ります。「入居者が勝手に契約した」で済む話ではなく、管理会社が防ぐべき理由がここにあります。逆に、貸主の側で分電盤を更新する計画があるなら、感震ブレーカーの記事で書いた分電盤タイプの設置と一緒に、貸主の計画修繕として進めるのが筋です。
本物の法定点検との見分け方|4年に1回・無料・書面で案内
点検商法が効くのは、本物の点検が存在するからです。電気事業法57条1項は、一般用電気工作物(一般家庭の電気設備)と直接つながる電線路を維持し運用する者(一般送配電事業者)に、その設備が技術基準に適合しているかどうかを調査する義務を課しています。57条の2により、この調査は経済産業大臣の登録を受けた登録調査機関(各地の電気保安協会など)に委託できます。頻度は電気事業法施行規則96条2項で4年に1回以上と定められ、調査員は身分を示す証明書を携帯し、求められれば提示しなければなりません。経済産業省と送配電網協議会は2025年1月に、この法定点検について「点検日時は事前に書面で案内する」「電話で知らせることはない」「点検は無料」「その場で設備交換の契約を持ち掛けることはない」と注意喚起しています。並べると見分けは簡単です。
| 見分ける点 | 本物の法定点検 | 点検商法 |
|---|---|---|
| 誰が来るか | 一般送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)または国の登録を受けた登録調査機関の調査員。身分証明書を携帯 | 「電力会社」「市役所から依頼」を名乗るが、確認すると関係がない |
| 知らせ方 | 事前に書面で日時を案内。電話で知らせることは原則ない | 突然の電話か訪問で「今から点検に伺う」 |
| 頻度 | 4年に1回以上(電気事業法施行規則96条) | 本物の点検の1か月後にも来る(事例1) |
| 費用 | 無料 | 点検は無料と言い、交換で12〜20万円 |
| 点検後 | 技術基準に適合しないときは、とるべき措置と放置した場合の結果を通知する(57条2項)。交換契約は持ち掛けない | 「古い」「法律で15年」「漏電で火事」と言い、その場で契約書にサインさせる |
| 確認先 | 管轄の一般送配電事業者の問合せ先(送配電網協議会が一覧を公開) | 「今決めないと」と急がせ、確認の時間を与えない |
賃貸の管理会社にとって大事な条文が、57条1項のただし書です。調査は「その一般用電気工作物の設置の場所に立ち入ることにつき、その所有者又は占有者の承諾を得ることができないときは、この限りでない」。つまり、入居者(占有者)が本物の法定点検の案内を怪しんで断ると、その戸の点検は行われません。点検商法を警戒するあまり、本物の点検まで断る入居者が出ると、漏電の発見が遅れます。注意文には「本物の法定点検は受けてください。書面の案内が来たら、不安なら管理会社に見せてください」を必ず入れます。断り方だけ教えて、受け方を教えないと、建物の安全が下がります。
契約してしまった入居者に管理会社がやること|8日間の動き方
注意文を配っても、契約してしまう入居者は出ます。そのとき管理会社が知っておく期限は2つです。
1つ目はクーリング・オフの8日。特定商取引法9条1項は、営業所等以外の場所(自宅)で契約した購入者は、書面または電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除ができると定め、契約書面を受領した日から起算して8日を経過した場合はこの限りでない、としています。国民生活センターは、業者が電話をかけて事前にアポイントを取ってから訪問する場合も訪問販売に該当すると考えられる、と脚注に書いています。工事が済んでいても8日以内なら解除でき、理由は要りません。通知は書面(はがきの控えを取る)かメールなどの電磁的方法で出します。
2つ目は消費者契約法の取消し。8日を過ぎていても、「法律で耐用年数が15年と決まっている」のように重要事項について事実と異なることを告げられて誤認し契約したときは、消費者契約法4条1項1号により取り消せます。7条1項により、この取消権は追認できる時(誤認に気づいた時)から1年、契約締結時から5年で消えます。事例4のように契約書面を受け取っていない場合は、そもそも8日の起算日が来ていない状態です。どちらも判断は消費生活センターに任せますが、管理会社は「まだ間に合う」と知っていることが大事です。
| いつ | 管理会社がやること | なぜ |
|---|---|---|
| 知った当日 | 契約書・見積書の有無と日付、工事が済んだかどうか、支払ったかどうかを入居者に聞く。書面があれば写真で受け取る | 8日の起算日は書面を受け取った日。書面が無ければその旨も記録する |
| 知った当日 | 工事が未実施なら、入居者から業者に「貸主の承諾がない工事はできない」と伝えてもらう。管理会社からも同じことを伝える | 分電盤は貸主の設備。無断の工事を止める根拠は民法606条・607条の2にある |
| 知った当日〜翌日 | 入居者に消費者ホットライン188を案内し、必要なら家族と一緒に電話してもらう。管理会社から消費生活センターに相談することもできる | クーリング・オフの通知の書き方、取消しの可否の判断は消費生活センターの領分 |
| 8日以内 | クーリング・オフの通知を出したことを確認する(はがきの控えかメールの送信画面) | 期限を過ぎると理由なしの解除ができなくなる |
| 工事が済んでいた場合 | 工事した業者名、電気工事士の氏名と免状の有無、交換した分電盤の型式を入居者経由で確認し、オーナーに報告。不明なら自社の電気工事業者に現物を見てもらう | 誰がどう工事したか分からない設備を建物に残さない |
管理会社が法律相談の代わりをする必要はありません。やるのは、日付を確かめること、工事を止めること、188につなぐこと、設備の現状をオーナーに報告することの4つです。シニア単身入居の見守り運用で書いた家族・地域包括支援センターとの連絡先が整っていれば、報告書の脚注にあるとおり、消費生活センターへの相談は家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員からでも可能です。
入居者に配る注意文(雛形)
入居時の書類に1枚足し、掲示板に貼り、年に1回の通知に同封する文面です。数字と連絡先は自社のものに差し替えてください。
「分電盤・ブレーカーの点検」を名乗る電話や訪問にご注意ください
電力会社の点検(4年に1回・無料)は、事前に書面で日時をお知らせします。電話でのお知らせはありません。点検の後に、その場で交換工事の契約をすすめることもありません。
当社が点検や工事でお部屋に伺うときは、事前に書面またはメールで、日時と担当者の名前をお知らせします。事前の連絡なく「管理会社です」「電力会社です」「市役所の依頼です」と訪ねてきた方は、お部屋に入れる前に当社【電話番号】にご確認ください。
お部屋の分電盤・ブレーカーは建物の設備です。交換が必要なときは当社が手配し、費用を入居者様にお願いすることはありません。訪問した業者と、その場で交換の契約をしないでください。「法律で耐用年数が15年と決まっている」という説明は事実ではありません。
もし契約してしまった場合でも、契約書を受け取った日から8日以内であれば、理由なく解除(クーリング・オフ)できることがあります。すぐに当社【電話番号】と、消費者ホットライン188(お住まいの地域の消費生活センターにつながります)にご連絡ください。
電力会社から書面で法定点検のご案内が届いたときは、点検をお受けください。案内に不安があれば当社にお見せください。
この文面には、断り方と受け方の両方が入っています。「点検を名乗る人を入れるな」だけを書くと、本物の法定点検まで断られます。最後の段落を削らないでください。
管理会社が今週やる5つ
| やること | どうやるか | 何のために |
|---|---|---|
| 1. 注意文を配る | 上の雛形を自社の連絡先に差し替え、管理物件の掲示板に貼り、今月の通知に同封する。新規契約の書類にも1枚足す | 入居者が「管理会社に聞く」を思い出せる場所に置く。特に70歳以上の入居者には郵送か手渡し |
| 2. 自社の訪問ルールを決めて周知する | 「当社の訪問は事前に書面・メールで日時と担当者名を知らせる」「電話だけで訪問を決めない」を社内ルールにし、注意文に書く | 「管理会社です」と名乗る訪問が来たとき、入居者が本物かどうかを判定できる基準を作る |
| 3. 70歳以上の入居者の戸を数える | 入居者台帳で契約者・同居人の生年月日から70歳以上の戸を抽出し、緊急連絡先(家族)が生きているかを確認する | 相談の8割が70歳以上。誰が狙われるかを先に知る。認知症入居者の対応で決めた家族連携の窓口と同じ一覧にする |
| 4. 法定点検の予定を把握する | 管轄の一般送配電事業者または登録調査機関に、管理物件の直近の調査時期を問い合わせる。案内が来る時期を入居者に先に伝える | 本物の点検を断られない。「先月点検したばかり」を管理会社が言えるようにする |
| 5. 報告書に2行を足す | 次の章の2行を今月のオーナー報告書に入れる。分電盤の設置年が分かる物件は、貸主側の計画修繕として更新時期を添える | 「入居者が18万円を払う話」を「貸主が計画して替える話」に戻す |
3の作業で、入居者台帳に同居人の年齢が入っていないことに気づく会社が多いはずです。契約者が50歳代でも同居の親が80歳代なら、電話に出るのは親です。台帳に同居人の生年月日の列が無ければ、今週足します。
オーナー報告書に足す2行
今月の報告書には、次の2行を入れることを勧めます。
国民生活センターが9月16日に公表した「分電盤の点検商法」の相談は、2025年度6,545件と前年度の約5倍で、契約者の8割が70歳以上、平均約18万円です。本物件の分電盤は貸主様の設備ですので、入居者様には「交換は管理会社が手配する。訪問業者とその場で契約しない」旨の注意文を【配布日】に配布しました。
あわせて、本物件の分電盤は【設置年/不明】で、電力会社の法定点検(4年に1回)は直近【年月/確認中】に実施されています。交換の必要が出た場合は、貸主様の計画修繕として当社が見積もりを取り、ご相談します。
「入居者が騙されないように注意しました」で終わらせず、「分電盤は貸主の設備で、替えるときは計画修繕として当社が動く」まで書くのが要点です。オーナーにとっては、自分の建物の設備を無資格の業者に勝手に替えられない、という安心の話でもあります。
このレポートが言っていないこと
国民生活センターの相談件数は、全国の消費生活センター等に寄せられた相談をPIO-NETに登録したもので、消費生活センター等からの経由相談は含まれません。被害の総数ではなく、相談した人の数です。契約当事者が賃貸住宅の入居者か持ち家の居住者かは公表されていないので、賃貸での件数は分かりません。4つの事例に「管理会社を名乗る」ものはなく、本稿の「管理会社の名前を出す変種」は想定であって事実ではありません。分電盤の交換が適正であれば、いくらが相場かも書かれていません。「約18万円」は相談のあった契約の平均で、工事の適正価格ではありません。住宅用分電盤に使用期限を定めた法律は無い、とは書かれていますが、経年劣化により故障する可能性はあるとも書かれており、更新を否定するものではありません。メーカーが示す更新の目安は資料に無いので、本稿も書いていません。
よくある質問
Q1. 「電力会社の点検」と名乗る訪問は全部断ってよいですか?
事前の書面案内なしに電話や突然の訪問で持ち掛けられた点検は、応じないでください。電気事業法に基づく本物の法定点検は、事前に書面で日時が案内され、電話で知らせることは原則ありません。書面の案内が来た点検は受けてください。入居者が断ると、その戸の調査は行われません(電気事業法57条1項ただし書)。
Q2. 入居者が自分の費用で分電盤を替えたいと言ったら?
分電盤は貸主の設備で、修繕は貸主の義務です(民法606条)。入居者が自費で替える場面は、貸主に通知したのに相当の期間内に修繕されないときか、急迫の事情があるときに限られます(607条の2)。まず管理会社が現状を見て、必要ならオーナーの計画修繕として見積もりを取ります。無断の工事は、資格の確認ができない設備を建物に残すことになるので止めてください。
Q3. 契約から8日を過ぎていました。もう戻りませんか?
クーリング・オフは契約書面を受け取った日から8日ですが、「法律で耐用年数15年」など事実と異なる説明で誤認して契約したときは、消費者契約法4条により、気づいた時から1年、契約から5年以内なら取消しができる場合があります。書面を受け取っていなければ8日の起算日が来ていません。判断は消費生活センター(188)に相談してください。
Q4. 「管理会社の依頼で点検に来た」と名乗る業者が来たら?
報告書の事例には電力会社と市役所を名乗るものがあり、管理会社を名乗る事例は載っていませんが、同じ手口は容易に想像できます。自社の訪問は必ず事前に書面かメールで日時と担当者名を知らせる、と決めて入居者に周知し、「事前連絡のない訪問は当社に電話で確認してから入れる」を基準にしてください。
Q5. 本物の法定点検で「不適合」と言われたら?
電気事業法57条2項により、調査の結果、技術基準に適合しないと認めるときは、とるべき措置と、放置した場合に生ずる結果が所有者または占有者に通知されます。入居者がこの通知を受け取ったら管理会社に渡してもらい、貸主の修繕として対応します。調査員がその場で交換工事の契約を持ち掛けることはありません。持ち掛けられたら、それは法定点検ではありません。
Q6. オーナーには何を報告すればよいですか?
注意文を配った事実と日付、本物件の分電盤の設置年(分かれば)、直近の法定点検の時期、交換が必要になった場合は貸主の計画修繕として当社が見積もりを取ること、の4点です。上の「報告書に足す2行」をそのまま使ってください。
まとめ
分電盤の点検商法の相談は2025年度6,545件で前年度の約5倍、70歳以上が8割、平均約18万円。手口は電力会社や市役所を名乗る電話から始まり、「古い」「法律で15年」「漏電で火事」でその場の契約に持ち込むものです。賃貸住宅の分電盤は貸主の設備で、入居者がその場で交換契約をする筋合いはありません。管理会社の仕事は、その決まりごとを入居者が思い出せる場所に置くこと、自社の訪問ルールを決めて本物と偽物を見分ける基準を作ること、本物の法定点検は受けてもらうこと、契約してしまった入居者の8日を数えて188につなぐこと、そしてオーナーに「替えるなら貸主の計画修繕として当社が動く」と書くことです。
出典(本文で参照している資料)
本稿の記述は、すべて2026年9月17日に実際に開いて読んだ次の資料にもとづきます。報告書のPDFは全文を取得して読み、条文はe-Gov法令検索の該当条のみを取得して読みました。
| 本稿で使った内容 | 資料 |
|---|---|
| 年度別相談件数(14/39/1,290/6,545/2,223、2025年度同期1,312)、地域ブロックの広がり、年代別(n=6,039)、4つの相談事例、消費者へのアドバイス5点、電話でアポを取る訪問も訪問販売に該当、不実告知の取消しの期間、契約購入金額(n=3,250)と平均約18万円、既支払額1円以上の件数と割合、要望先、公表日(9月16日) | 国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください-相談が各地に広がり増加しています-」(2026年9月16日)・同 報告書本文(PDF) |
| 65歳以上の相談330,497件(前年度304,674件)、相談全体の37.7%、年齢が上がるほど訪問販売・電話勧誘販売の割合が上がり85歳以上では訪問販売が最多 | 国民生活センター「2025年度 65歳以上の消費生活相談の状況」(2026年9月16日) |
| 2024年11月末時点で前年同期の約25倍、約8割が70歳以上、電力会社やその委託会社を名乗る手口、4年に1回の無料法定点検 | 国民生活センター「『分電盤の点検に行きます』の電話から始まる勧誘に注意-2024年度に急増しています-」(2025年1月15日) |
| 法定点検は4年に1回以上、点検日時は事前に書面で案内、電話で知らせない、点検作業員がその場で契約を持ち掛けない、交換工事は電気工事士の資格が必要、点検作業員は身分証等を携帯 | 経済産業省「電気設備の点検等を装った訪問者に御注意ください」(2025年1月15日) |
| 点検は国の登録を受けた調査機関に委託、点検日時は書面で案内、点検の際に費用はかからない、6,000V以上の受電は対象外、地域ごとの一般送配電事業者の問合せ先 | 一般社団法人送配電網協議会「4年に一度のお客さま電気設備の安全調査の際のご注意事項について」(2025年1月15日) |
| 57条1項(電線路維持運用者の調査義務、所有者又は占有者の承諾を得られないときはこの限りでない)、2項(不適合のときの通知)、57条の2(登録調査機関への委託) | 電気事業法(昭和39年法律第170号)|e-Gov法令検索 |
| 96条2項(調査は四年に一回以上、調査員は身分を示す証明書を携帯し関係人の請求があれば提示) | 電気事業法施行規則(平成7年通商産業省令第77号)|e-Gov法令検索 |
| 9条1項(営業所等以外の場所での契約は書面又は電磁的記録により申込みの撤回・解除ができる、書面受領日から起算して八日) | 特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)|e-Gov法令検索 |
| 4条1項1号(重要事項について事実と異なることを告げられ誤認した申込み・承諾の取消し)、7条1項(追認できる時から一年、契約締結時から五年) | 消費者契約法(平成12年法律第61号)|e-Gov法令検索 |
| 606条1項(賃貸人の修繕義務)、607条の2(賃借人による修繕ができる2つの場合) | 民法(明治29年法律第89号)|e-Gov法令検索 |
| 3条2項(第一種又は第二種電気工事士でなければ一般用電気工作物等に係る電気工事の作業に従事してはならない) | 電気工事士法(昭和35年法律第139号)|e-Gov法令検索 |
本稿の計算:5.07倍・1.69倍・70歳以上81.2%・80歳以上52.7%・15万円以上66.9%・65歳以上の相談の増加25,823件は、資料の数字から本稿が出したものです。注意文の雛形、8日間の動き方の表、「今週やる5つ」「報告書の2行」は本稿の整理です。賃貸住宅の入居者に限った件数、分電盤交換の適正価格、メーカーの更新目安、管理会社を名乗る事例は資料に無いので書いていません。


