物件別の採算を知るには、管理料などの自社収入に対して、担当者の作業時間と直接支出を対応させます。まず一つの物件・一か月から始め、会計帳簿と照合できる記録を残しましょう。
最初に、誰の収支を調べるか決める
この記事は、賃貸管理を受託する管理会社が、自社の業務にかかる原価を整理するためのものです。オーナーの賃貸経営や、自社保有物件の投資収支とは集計の対象が異なります。
例えば、オーナーへ送金するために預かった家賃は、その全額が管理会社の売上になるわけではありません。契約に基づく管理料と預り金を分けて記録します。修繕代も、誰が契約し誰が負担するかで扱いが変わります。通過するお金を丸ごと収入・原価にすると、比較ができなくなります。
記録するのは、収入・作業・支出・配賦の4つ
| 項目 | 残す記録 | 照合先 |
|---|---|---|
| 自社収入 | 対象月、管理料、別途受託した業務の報酬 | 管理契約・請求明細 |
| 担当者の作業 | 物件ID、作業内容、時間、担当者 | 対応履歴・勤怠 |
| 直接支出 | 自社負担の外注費・交通費など | 請求書・精算書 |
| 共通費の配賦 | 対象費用、配賦基準、計算根拠 | 月次帳簿・社内ルール |
作業時間は、目的別に記録する
「電話対応」だけでなく、入金確認・修繕手配・更新案内など、見直したい仕事の単位で記録します。細分化しすぎて入力が続かなくなる場合は、少数の区分にまとめます。集計に要した時間も残すと、記録自体の負担を確認できます。
共通費は、同じ基準で配る
複数物件で使うシステムや事務所の費用には、戸数・作業時間・利用人数など、業務との関係を説明できる基準を選びます。どの基準が常に正しいというものではありません。月ごとに都合よく変えず、変更するときは理由と適用開始月を記録します。
架空の計算例で、数字の意味を確認する
以下は計算方法を示すための架空例です。実在する会社の実績や業界平均ではありません。対象物件の月額管理料収入を50,000円、社内で定めた時間単価を2,000円、作業時間を5時間とします。
- 社内作業の原価:2,000円 × 5時間 = 10,000円
- 自社負担の外注費:4,000円
- 共通費の配賦額:2,000円
- この集計範囲での差額:50,000円 − 10,000円 − 4,000円 − 2,000円 = 34,000円
差額を収入で割ると68%ですが、これは設定した費用だけを含む物件別の管理指標です。会社全体の営業利益率・税引後利益・現金残高を示しません。時間単価に人件費の何を含めたか、未配賦費用があるかもセットで表示します。
月次で確認する順番
- 対象月をそろえる。入金日だけで分けず、どの月の業務に対応する収入・費用かを確認します。税込・税抜も混在させません。
- 未記録と二重計上を探す。物件にひも付かない支出や、直接支出と共通費の両方に入れた費用を確認します。
- 前月との差を説明する。更新や退去など一時的な作業と、毎月続く作業を分けます。
- 変更を一つ決める。入力の重複、承認待ち、問い合わせの行き違いなど、記録から分かった箇所に担当者と期限を付けます。
- 翌月に確かめる。作業時間だけでなく、再対応・訂正・未処理の件数も確認します。
一か月の赤字だけで管理契約の見直しを決めると、季節的な仕事を見落とします。契約範囲、入退去、物件特性を踏まえて複数月を比較してください。
そのまま記入できる月次シート
登録不要です。テキスト形式の空欄シートなので、保存後に自社の条件を記入できます。
よくある質問
Q1. Excelでも始められますか?
はい。物件ID・対象月・記録区分をそろえ、根拠資料に戻れる形なら表計算でも始められます。入力者が増えたら変更履歴と閲覧権限を決めます。
Q2. 人件費をすべて物件に配るべきですか?
経営判断の目的に合わせます。採用・全社会議などを未配賦費用として別に示す方法もあります。配り切ることより、含めた範囲が分かることが大切です。
Q3. 赤字の物件はすぐ値上げすべきですか?
先に契約外の対応、記録漏れ、一時的な作業を確認します。サービス内容の変更は契約条件とオーナーへの説明を伴います。
Q4. 導入すると何時間削減できますか?
一律の削減時間は示せません。導入前後で同じ作業・対象月・担当範囲を測り、集計作業そのものの時間も含めて判断します。
出典・確認日
確認日:2026年9月10日。制度の説明は以下の公的資料に基づきます。記録方法と確認シートは編集部の提案です。
訂正履歴
2026年9月10日:根拠となる記録を提示できない作業時間・利益改善・ROIの実績表現を撤回しました。集計対象を管理会社に限定し、計算は架空例であることを明記しました。