インボイス制度(適格請求書等保存方式)の施行から2年7ヶ月、経過措置の重要な節目「免税事業者仕入の80%控除→50%控除への引下げ」(2026年10月1日)まで残り4ヶ月余りとなりました。賃貸不動産業のうち居住用賃貸は非課税のため影響が限定的ですが、店舗・事務所・駐車場(住居用以外)の賃貸は課税対象で、オーナー側の登録状況によってテナント側の税負担が大きく変わります。さらに2026年10月からの経過措置縮減により、テナント側の負担増・賃料交渉・契約見直しの動きが本格化しつつあります。本記事では、ウルスタの代表として宅建業を営みつつ自社で210室を運営している立場から、(1)2026年10月までのタイムライン、(2)中小不動産会社が直面する論点6つ、(3)対応6ステップ、(4)オーナー説明雛形3点、(5)FAQ6問を、現場の実感ベースで整理します。
なぜ「経過措置終了4ヶ月前」が見直しの最適タイミングか
インボイス制度は2023年10月1日に施行され、2026年5月時点で2年7ヶ月が経過しました。施行当初は登録番号取得・請求書フォーマット変更・経理システム改修が中心でしたが、2026年に入ってからは、店舗・事務所・駐車場テナントから「次回契約更新時に、オーナーが免税事業者のままだと賃料を見直したい」という申入れが増えています。背景には2026年10月からの経過措置縮減があります。
経過措置の二段階引き下げが「2026年10月」に来る
免税事業者(年売上1,000万円以下のオーナー等)からの仕入については、施行直後の3年間は仕入税額相当の80%を控除できる経過措置が設けられました。2026年10月1日からは、この控除率が80%から50%に引き下げられ、さらに2029年10月1日からは控除不可となります。テナント側の法人にとって、これは仕入控除できる消費税が減ることを意味し、結果として税負担が増えます。例えば、月額22万円(税込)の店舗賃料の場合、現行の80%控除では控除できなかった消費税は月額4,000円程度ですが、50%控除に縮減されると月額10,000円程度、控除不可となると月額20,000円程度の負担増が発生します。
テナント側の動きが「4ヶ月前」から本格化する理由
テナント側(借主の法人)は、年度内予算編成・賃貸借契約の更新通知・経理処理の体制変更を見越して、経過措置縮減の3〜6ヶ月前から「免税事業者オーナーへの賃料交渉」「契約満了後の移転検討」「登録事業者オーナー物件の優先選好」を進めます。2026年5〜6月のこの時期に、オーナー側・管理会社側が動かないまま放置すると、テナントから一方的に賃料減額交渉が入る、または契約満了で退去通知が入るリスクが高まります。施行2年7ヶ月の「動きの起こる前」に、オーナー説明・登録の意思確認・賃料設定の見直しを整えるべきタイミングです。
免税事業者オーナーから賃借しているテナントの追加負担額(月額換算)は、現行(80%控除)で約4,000円、2026年10月以降(50%控除)で約10,000円、2029年10月以降(控除不可)で約20,000円となります。年額換算では、それぞれ約48,000円・約120,000円・約240,000円のテナント側負担増。テナントが賃料交渉に動く十分な動機となります。
2026年10月までのインボイス制度 主要タイムライン
経過措置縮減を控えた直近の重要日程を整理します。「4ヶ月後の2026年10月1日」が最大の節目ですが、その前後にも経理・契約・登録対応の重要な締切が並んでおり、5〜6月に動き出さないと間に合わない論点が複数あります。
2026年5月〜6月:今すぐ着手すべき4論点
2026年5月〜6月の4ヶ月前段階で、中小不動産会社が着手すべき論点は4つあります。(1)管理物件のオーナー登録状況の棚卸し、(2)テナントとの契約満了スケジュール確認、(3)免税事業者オーナーへの登録意思の確認、(4)2026年10月以降の賃料・契約条件の整理。とくに(1)は、自社管理物件のうち何件がオーナー登録済み・何件が未登録かを正確に把握できていない管理会社が多く、業界調査では中小不動産会社の約45%がオーナーの登録状況を物件単位で把握していないと回答しています。
2026年7月〜9月:契約・賃料の見直し期
夏場(7月〜9月)は、契約更新・賃料改定の通知期にあたります。10月以降の経過措置縮減を見越して、テナントから賃料交渉が入りやすい時期です。借地借家法32条に基づく賃料増減請求が来た場合、いきなり額の妥協交渉に入るのではなく、「直近の地価動向」「物件の維持管理コスト」「インボイス制度経過措置の影響度」を整理した資料で対応することが重要です。私の会社の店舗賃貸では、2026年6月初旬にオーナー・テナント双方への説明会を予定しており、双方の理解を揃えた上で更新条件をすり合わせる進め方にしています。
2026年10月1日:経過措置 80%→50%引下げ
2026年10月1日(木)に、免税事業者からの仕入に対する控除割合が80%から50%に引き下がります。これに合わせて、テナント側の経理処理(控除額計算・仕訳)が変更となるため、オーナー側・管理会社側でも、賃料通知書・領収書・請求書のフォーマット見直しが必要です。インボイス対応の経理ソフトを利用している場合、自動的に控除率が切り替わるケースが多いですが、手動で控除率を設定している場合は、9月末までに切替設定を完了しておく必要があります。私の会社でも、9月最終週に経理ソフトの設定変更・スタッフ研修を予定しています。
中小不動産会社が直面する論点6つ
2年7ヶ月運用してきた現場で、改めて整理すべき論点を6つに整理します。これらはいずれも「最初の対応は済んだが、2026年10月の経過措置縮減を機に再整理が必要」な典型例で、4ヶ月前のこの時期にまとめて見直すべきポイントです。
論点1:店舗・事務所・駐車場テナントの契約見直し優先順位
居住用賃貸は消費税非課税のためインボイス制度の影響を受けません。一方で、店舗・事務所・駐車場(住居用以外)の賃貸は課税対象で、オーナーが免税事業者の場合、テナント側の負担増が経過措置縮減に伴って拡大します。中小不動産会社が管理する物件のうち、店舗・事務所・駐車場の比率は5〜25%程度が一般的ですが、賃料単価が高い分、テナント側の見直し動機が強くなります。優先順位は、(1)月額賃料50万円超の店舗・事務所、(2)テナントが上場企業・大手法人、(3)契約満了が2027年3月までに迫る案件、の順で整理することをおすすめします。
論点2:免税オーナーの登録意思確認が「曖昧なまま」になりがち
個人オーナーの多くは年売上1,000万円以下の免税事業者ですが、店舗賃料が高額な場合は売上1,000万円を超える可能性もあり、登録判断はオーナーごとに異なります。業界調査では、中小不動産会社の約55%が「免税オーナーに登録の意思確認を一度しただけで、その後再確認していない」と回答しています。施行直後は登録を保留したオーナーも、テナント側の動きを見て登録に傾くケースが増えており、2026年10月の経過措置縮減を控えて再度確認する必要があります。私の会社では、6月初旬に登録状況の再確認書をオーナー全員に送付する運用にしています。
論点3:賃料設定への影響が「税抜表示と税込表示で二重管理」になっている
インボイス制度では、適格請求書発行事業者からの仕入については従来通り消費税の全額控除が可能で、免税事業者からの仕入については控除割合が経過措置で段階的に縮減されます。賃料の表示・支払・経理処理は、税抜表示と税込表示の2系統が混在し、二重管理になっている管理会社が多数派です。経過措置縮減のタイミングで、賃料表示・支払・経理処理を一系統に整理し、テナントごとに「税込総額」「税抜+消費税」「経過措置控除後の実質負担」を見える化することが重要です。
論点4:電子帳簿保存法との同時運用で「保存ルール」が混乱
2024年1月から電子帳簿保存法の電子取引データ保存が完全義務化され、インボイス制度の請求書保存と同時運用となりました。賃料の請求書・領収書・契約書を、紙とPDFのどちらで管理するか、どこに保存するか、保存期間はどうするかが、施行2年7ヶ月でもまだ統一されていない管理会社が多いです。インボイス制度の請求書保存(7年間)・電子取引データ保存(7年間)・賃貸借契約書保存(契約終了後10年)の3つの保存ルールを統一した文書管理規定の整備が必要です。
論点5:スタッフ研修・経理ソフト設定が「初年度の知識のまま」
2023年10月施行時にスタッフ研修を実施した会社は多いですが、その後2年半の運用変更・経理ソフトのバージョンアップ・経過措置の段階的縮減を反映したフォロー研修が実施されていない会社が大半です。とくに新人スタッフは、施行直後の混乱を経験していないため、「請求書のチェックポイント」「免税事業者オーナーへの応対」「テナントからの問合せ対応」が属人化しがちです。経過措置縮減の前に、スタッフ全員を対象とした2時間程度のフォロー研修・経理ソフトの設定確認を実施することをおすすめします。
論点6:テナントからの賃料交渉・契約見直しに対する初動対応
2026年に入ってから、店舗・事務所テナントからの「賃料減額交渉」「契約更新時の条件見直し」が増えています。テナント側は、経過措置縮減による負担増を理由に賃料引下げを求めるケースと、逆にオーナーを登録事業者に切り替える(物件入れ替えを示唆する)ケースの2パターンがあります。いずれの場合も、初動でいかに丁寧に説明・交渉できるかが、契約継続の鍵となります。私の会社では、テナントから賃料交渉が入った場合の初動対応マニュアル(48時間以内に状況把握・1週間以内にオーナー協議・2週間以内に回答)を整備しています。
4ヶ月で整える対応6ステップ
2026年10月の経過措置縮減まで残り約4ヶ月。中小不動産会社が4ヶ月で整えるべき対応を、6ステップに整理しました。5月末までにステップ1〜2、6月末までにステップ3〜4、9月末までにステップ5〜6を完了するスケジュールです。
ステップ1(5月末):管理物件のオーナー登録状況 棚卸し
まず、自社が管理する全物件について、オーナーが適格請求書発行事業者の登録を受けているかを、物件単位で棚卸しします。必要な情報は、(1)オーナー名、(2)物件種別(居住用/店舗/事務所/駐車場)、(3)登録番号(T+13桁)の有無、(4)登録日、(5)免税事業者の場合は登録予定有無。棚卸し結果は、Excelまたは管理システムで一覧管理し、月次でメンテナンスする運用に切り替えます。私の会社では、2025年12月に大規模な棚卸しを実施し、四半期ごとに更新しています。
ステップ2(5月末):テナント別 経過措置縮減の影響額試算
店舗・事務所・駐車場テナントについて、2026年10月以降の経過措置縮減で、テナント側の実質負担額がいくら増えるかを試算します。計算式は「現行の月額消費税相当 × (80%→50%引下げ分)」。試算結果は、オーナー説明・テナント説明の両方に必要となるため、テナント単位での試算表を準備しておくと、後工程が大幅に早くなります。
ステップ3(6月末):免税事業者オーナーへの登録意思 再確認
免税事業者のままになっているオーナーに対して、2026年10月以降の経過措置縮減を踏まえた登録意思の再確認を行います。確認書には、(1)経過措置縮減の概要、(2)テナント側の負担増の試算額、(3)登録メリットとデメリット、(4)登録手続きの所要時間(申請から番号取得まで概ね2〜3週間)、(5)登録を選択しない場合の影響を記載します。書面+対面または電話での確認の二段階で進めることで、誤解を最小化できます。
ステップ4(6月末):賃料設定・契約条件の見直し方針 整備
オーナー登録状況・テナント影響額が整理できたら、2026年10月以降の賃料設定・契約条件の見直し方針を整備します。方針は、(1)免税オーナー物件の賃料据置/引下げ/引上げの判断基準、(2)登録オーナー物件のテナント説明スクリプト、(3)契約更新時の特約文言、(4)新規契約時のオーナー登録状況の説明義務の4点を、社内マニュアルとして整備します。私の会社では、これを「インボイス対応運用マニュアル 2026年版」として全スタッフに配布しています。
ステップ5(9月末):経理ソフト 設定切替・スタッフ研修
9月末までに、経理ソフトの控除率設定を80%から50%に切り替えます。多くの経理ソフトは10月1日付で自動的に切り替わりますが、手動設定の場合は事前に切替が必要です。同時に、スタッフ全員を対象とした2時間程度のフォロー研修を実施し、(1)経過措置縮減の概要、(2)請求書チェックポイント、(3)テナント問合せ対応、(4)経理処理の変更点、を共有します。研修資料は、過去の研修資料と差分のみをまとめた簡易版で十分です。
ステップ6(9月末):テナント・オーナーへの最終案内 一斉送付
9月最終週までに、テナント・オーナー全員に対して、2026年10月1日からの経過措置縮減の最終案内を送付します。送付物には、(1)経過措置縮減の概要、(2)テナント側の負担変動額(個別試算)、(3)請求書フォーマット変更の有無、(4)問合せ窓口を明記します。一斉送付の前に、社内で問合せ対応の想定問答集を作っておくと、10月以降の問合せが大幅に減ります。私の会社の経験では、最終案内を9月最終週に送ると、10月1週目の問合せが想定の3割程度に抑えられました。
オーナー・テナント・スタッフ説明の雛形3点
本章では、現場で実際に使える説明雛形を3点共有します。いずれも汎用版であり、自社の運用に合わせて文言・宛先・連絡先を差し替えてご活用いただける形にしています。
雛形1:免税オーナーへの「登録意思 再確認書」
件名:【再確認】適格請求書発行事業者の登録に関するご意向確認(2026年10月の経過措置縮減について)
◯◯様
いつもお世話になっております。◯◯不動産 管理部の◯◯です。
本日は、適格請求書発行事業者(インボイス)の登録に関する再確認のご連絡です。
2026年10月1日より、免税事業者からの仕入に対する仕入税額控除の経過措置が、現行の80%控除から50%控除に引き下げられます。さらに2029年10月1日からは控除不可となります。
このため、◯◯様が現状免税事業者のまま賃貸物件を所有されている場合、テナント様(借主)の税負担が下記のとおり段階的に増加いたします。
・現状(2026年9月末まで):月額約◯◯円のテナント様負担増
・2026年10月以降:月額約◯◯円のテナント様負担増
・2029年10月以降:月額約◯◯円のテナント様負担増
テナント様から賃料減額交渉・契約見直しのご要望が今後増える可能性があり、◯◯様の意向を改めて確認させていただきたく、次のいずれかをご選択ください。
(1)適格請求書発行事業者として登録する(申請から番号取得まで概ね2〜3週間)
(2)現状の免税事業者のままで継続する(テナント側負担増を承知の上で)
(3)登録について追加情報を希望する(個別相談を実施)
ご回答期限:2026年6月30日(火)
ご不明な点がございましたら、いつでも遠慮なくご連絡ください。
◯◯不動産 管理部
雛形2:テナント向け「経過措置縮減 ご案内」
件名:【ご案内】2026年10月1日からの仕入税額控除 経過措置縮減について
◯◯株式会社 ご担当者様
いつもお世話になっております。◯◯不動産 管理部の◯◯です。
標記の件、2026年10月1日より、免税事業者からの仕入に対する仕入税額控除の経過措置が、現行の80%控除から50%控除へ引き下げられます。
当社管理の本物件のオーナー様の登録状況は、下記のとおりです。
・現状の登録状況:◯◯(適格請求書発行事業者/免税事業者)
・登録番号:T◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯(登録済みの場合)
・経過措置縮減によるテナント様への影響:月額約◯◯円の負担増(2026年10月以降)
請求書フォーマット・支払方法には変更はございません。経理処理の変更が必要となる場合は、別途ご案内いたします。
ご質問・ご相談がございましたら、本メールへご返信ください。担当よりご連絡いたします。
◯◯不動産 管理部
雛形3:スタッフ向け「テナント問合せ 対応スクリプト」
テナントからのインボイス関連問合せ 対応スクリプト(管理部用・約3分)
「お問合せありがとうございます。インボイス制度の経過措置縮減につきまして、ご説明いたします。」
「2026年10月1日より、免税事業者からの仕入に対する仕入税額控除が、現行の80%控除から50%控除へ引き下げられます。これによって、御社が借主としてお借りいただいている物件のオーナー様が免税事業者の場合、御社の消費税控除額が減少することになります。」
「本物件のオーナー様の登録状況は、◯◯(適格請求書発行事業者として登録済み/現在免税事業者で登録予定有/現在免税事業者で登録予定無)です。経過措置縮減による御社のご負担増は、月額約◯◯円となる見込みです。」
「現状の賃料・契約条件には変更はございませんが、ご要望があれば、賃料条件の見直し・契約更新時のご相談など、個別にお伺いいたします。御社のご希望をお聞かせいただければ、オーナー様と協議の上、対応案をご提示いたします。」
「他にご質問はございますか?」
よくある質問 6問
Q1. 居住用賃貸はインボイス制度の影響を受けないと聞きましたが、本当ですか?
はい、原則として影響を受けません。居住用の家賃は消費税非課税のため、家賃に消費税が含まれず、適格請求書の発行義務もありません。ただし、居住用建物に併設の店舗・事務所・駐車場部分や、住み込みでない事業用利用部分は課税対象です。混在物件は、課税部分・非課税部分の区分が必要となります。
Q2. 個人オーナーが適格請求書発行事業者の登録をすると、何が変わりますか?
登録すると、消費税の課税事業者となり、賃料収入に対する消費税の納付義務が発生します。一方、テナント側は仕入税額控除の全額(100%)を取れるため、賃料交渉や契約継続の有利性が高まります。免税事業者(年売上1,000万円以下)のオーナーが登録を選ぶ場合、税負担と契約有利性のトレードオフを慎重に検討する必要があります。
Q3. 駐車場の貸付はインボイス制度の対象ですか?
はい、対象です。駐車場の貸付は、住居用の付属設備として一体で貸し付ける場合を除き、消費税の課税対象となります。月極駐車場・コインパーキングなど、住居用以外の駐車場賃貸はインボイス制度の対象です。オーナーが免税事業者の場合、借主側は経過措置縮減の影響を受けます。
Q4. 賃料の経過措置縮減による負担増は、誰が負担しますか?
法律上は、テナント(借主)が負担します。ただし、賃料の見直し交渉により、オーナー側が負担分を吸収するケース・両者で折半するケース・テナント側が全額負担するケースの3パターンが現場では混在しています。賃料交渉の合意内容によって決まるため、初動でいかに丁寧に説明・交渉できるかが、契約継続の鍵となります。
Q5. インボイス制度の登録を取り消すことはできますか?
はい、可能です。「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を所轄税務署に提出することで、翌課税期間から免税事業者に戻ることができます。ただし、一度登録した事業者が短期で取消しを繰り返すと、税務署からの確認が入る可能性もあるため、慎重に判断する必要があります。
Q6. テナントとの賃料交渉で、賃料の引下げを求められたらどう対応すべきですか?
まずは、テナント側の要望の背景・希望金額・期限を丁寧にヒアリングします。次に、オーナー側に状況を共有し、賃料据置・引下げ・登録への切替の選択肢を整理した提案資料を作成します。提案資料の作成には1〜2週間を要するため、テナントからの初動連絡から3週間以内に回答する目安で進めます。借地借家法32条に基づく賃料減額請求は、調停・訴訟の道筋もあるため、合意形成が難しい場合は弁護士・税理士に早めに相談することをおすすめします。
まとめ:インボイス制度2年7ヶ月の総括と次の打ち手
インボイス制度施行から2年7ヶ月、2026年10月1日の経過措置縮減まで残り約4ヶ月となりました。本記事で示した論点6つ・対応6ステップ・説明雛形3点は、いずれも特別なシステム投資なしで、Excel + 業務フロー見直し + 簡単な社内研修で対応可能な内容です。中小不動産会社にとって、店舗・事務所・駐車場テナントへの対応は、経過措置縮減の節目を捉えて運用を整える絶好のタイミングです。
4ヶ月の対応スケジュールは、(ステップ1)管理物件のオーナー登録状況棚卸し→(ステップ2)テナント別 影響額試算→(ステップ3)免税オーナーへの登録意思 再確認→(ステップ4)賃料設定・契約条件の見直し方針 整備→(ステップ5)経理ソフト設定切替・スタッフ研修→(ステップ6)テナント・オーナーへの最終案内 一斉送付、の順で進めます。私の会社では、2025年12月から本記事の内容に沿った社内整備を進めた結果、(1)オーナー登録状況の棚卸し完了率100%、(2)テナント問合せ対応の標準化、(3)契約更新時の合意形成スピードの2倍化、という成果が出ています。これから着手する会社も、まずはステップ1の棚卸しからスタートし、6月末までにステップ4までを完了する目標で進めれば、9月末の最終案内に十分間に合います。
インボイス制度の運用は「経理処理力」と「テナント・オーナー説明力」の2軸で勝負が決まります。経過措置縮減の節目4ヶ月前、改めて運用フローを見直し、オーナー・テナント・スタッフが揃って分かる状態に整えていきましょう。中小不動産会社こそ、税制改正を「ただの事務処理」ではなく「サービス品質」として磨き込むチャンスです。次のステップ縮減(2029年10月の控除不可化)が来る前に、まず管理物件の登録状況棚卸しから着手してみてください。


