国土交通省は2026年10月8日、「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」の第1回を開きました。住宅の品質・性能の維持保全と、その情報の保存を促す住宅市場の枠組み、既存住宅の買主が安心して取引できる環境の整備について議論を始めるもので、開催は10月2日に報道発表されています。第2回は12月7日の予定で、制度をどう変えるか、いつから変わるかはまだ決まっていません。本稿は、公表された資料の中身、日程、資料に載った数字、そして賃貸管理の現場で今の法令のもとですでに関係していることを整理します。
結論
- 国土交通省住宅局が新しい検討会を始めました。名称は「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」で、第1回は2026年10月8日(木)10時〜12時に開かれました。
- 検討するのは3つの仕組みです。(1)既存住宅を安心して取引でき、維持保全の状況が市場で評価される仕組み、(2)維持保全の状況を継続的に評価する仕組み、(3)維持保全に関する情報を保存・活用する仕組み。
- 背景は、新築着工戸数の減少と住宅価格の上昇です。あわせて、令和4年10月に施行された改正長期優良住宅法等について、5年を目途に施行状況等を検証すべきとされていることも資料に書かれています。
- 次は2026年12月7日(月)の第2回です。スケジュール案では、各ワーキンググループの検討状況の報告と、とりまとめ案の提示が予定されています。
- 賃貸管理会社に新しい義務はまだありません。「背景・課題と検討の方向性(案)」に賃貸住宅についての記述は見当たりません。ただし、今の宅建業法でも、建物状況調査の有無と結果の概要は貸借の重要事項説明の対象です。
発表の中身|何を検討するのか
国土交通省の報道発表(2026年10月2日)は、「国民の皆さまが過度な負担なく希望する住生活を実現できる社会」に向けて、質が確保された住宅が長く受け継がれる環境をつくるため、住宅の品質・性能の維持保全を後押しする市場の仕組みや、既存住宅の買主が安心して取引できる環境整備の方策について議論を始めるとしています。
第1回の資料「背景・課題と検討の方向性(案)」は、検討の柱を次のように示しています。
住宅市場で望まれる品質・性能
消費者が住宅に望む品質・性能は何か、という問いを立て、検証の視点として次の3つを挙げています。
- 適切な維持保全により持続可能な品質・性能であるか
- 比較的容易な点検・検査によって持続を確認できる品質・性能であるか
- 品質・性能の持続に関する不確実性を、保険等によりリスクヘッジする必要があるか
具体的な仕組み
- (1) 既存住宅を安心して取引でき、維持保全の状況が市場で適切に評価される仕組み:住宅ローン・リバースモーゲージ等での活用、瑕疵保険等での活用、住宅性能表示・評価制度のあり方、既存住宅のインスペクションや瑕疵保険の普及・充実
- (2) 維持保全の状況を継続的に評価する仕組み:定期点検・補修の基本的な考え方、維持保全の実施状況を評価する仕組み
- (3) 維持保全に関する情報を保存・活用する仕組み:必要となる情報の基本的な考え方、情報の保存方法と活用方法の考え方
このほか、改正長期優良住宅法等の施行(令和4年10月)後、5年を目途に施行状況等の検証を実施すべきとされていることが「その他」として挙げられています。
検討会の概要資料によると、座長は齊藤広子氏(東京都市大学大学院 特任教授)で、「維持保全評価・既存評価」「履歴情報」「瑕疵担保履行制度・消費者保護」の3つのワーキンググループを置きます。
日程|第2回は12月7日
報道発表と今後のスケジュール(案)に書かれている日付だけを並べます。
| 日付 | 何があるか | 中身 |
|---|---|---|
| 2026年10月2日 | 国土交通省が開催を発表 | 「第1回 住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」の開催を報道発表 |
| 2026年10月8日(木) | 第1回 検討会 | 現状と課題、検討の方向性の提示、意見交換。資料は国土交通省のページに掲載済み。議事要旨は後日公開 |
| 2026年12月7日(月) | 第2回 検討会(予定) | スケジュール案では、各ワーキンググループの検討状況の報告と、とりまとめ案の提示 |
| 2027年3月10日(水) | 第3回 検討会(予定) | スケジュール案に日時の記載あり。議事は書かれていません |
| 未定 | 制度の見直しの中身・施行日 | まだ決まっていません。法改正をするかどうかも資料には書かれていません |
資料に載った現状の数字
第1回の資料「住宅の維持保全・流通に関する現状について」から、取引の現場に近い数字を抜き出しました。数字と注記は資料の記載のままです。
| 項目 | 数字 | 資料での注記 |
|---|---|---|
| 既存住宅の流通シェア(マンション) | 2025年 66.3%(2015年 53.8%) | 既存住宅販売量指数・住宅着工統計から国土交通省作成 |
| 既存住宅の流通シェア(戸建て) | 2025年 35.8%(2015年 26.2%) | 同上 |
| 売買時に既存住宅状況調査等を実施する割合 | 3割程度 | インスペクションに関する消費者向けアンケート調査(令和4年度) |
| 長期優良住宅の累計認定(新築) | 1,901,046戸 | 令和8年3月末現在 |
| 住宅履歴情報の共通IDの発行数 | 累計 約18万件 | 令和7年度末時点。情報サービス機関は27機関 |
| 住まいるダイヤルへの既存住宅売買の相談 | 令和7年度 1,307件 | 12年間で約1.9倍 |
既存住宅の流通シェアはこの10年で上がっている一方、売買の時に既存住宅状況調査等を実施する割合は3割程度にとどまっている、というのが資料の示す現状です。
今の法令で、すでに賃貸に関係していること
検討会の結論はまだですが、建物の調査や記録の扱いは、今の宅建業法にすでに入っています。宅地建物取引業法と同法施行規則で確かめた範囲を整理します。
| 条文 | 何を求めているか | 賃貸(貸借)で関係するか |
|---|---|---|
| 宅建業法 第34条の2第1項第4号 | 既存の建物の媒介契約書に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載する | 売買・交換の媒介契約の規定。貸借の媒介には当たりません |
| 宅建業法 第35条第1項第6号の2イ | 既存の建物について、建物状況調査(一定期間内のもの)を実施しているかどうかと、実施している場合の結果の概要を重要事項として説明する | 貸借でも説明の対象。期間は1年(鉄筋コンクリート造等の共同住宅等は2年。施行規則第16条の2の2) |
| 宅建業法 第35条第1項第6号の2ロ | 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況を説明する | 施行規則第16条の2の3で「売買又は交換の契約に係る住宅」の書類に限られ、貸借は対象外 |
貸借の重要事項説明で求められるのは、建物状況調査を「実施しているかどうか」と「結果の概要」の説明で、調査そのものを実施する義務ではありません。
賃貸管理の実務で今できること
新しい制度を先取りするものではなく、今の法令と業務の範囲でできることです。
- 管理物件の建物状況調査の有無を把握する。オーナーが建物状況調査を実施していれば、実施日と報告書の所在を物件ごとに控えます。貸借の重要事項説明では、1年以内(鉄筋コンクリート造等の共同住宅等は2年以内)のものについて有無と結果の概要を説明します。仲介会社から問い合わせを受けたときにすぐ答えられるようにしておきます。
- 修繕・点検の記録を物件ごとにそろえる。日付、箇所、内容、金額、施工業者、写真を一つの場所に残します。修繕の承認と履歴は、ウルスタくんの修繕の画面と物件詳細の修繕履歴で物件ごとに残せます。
- 確認済証・検査済証などの所在をオーナーと確認する。オーナーが物件を売るときは、施行規則第16条の2の3の書類(確認済証、検査済証、建物状況調査の報告書、建設住宅性能評価書、定期調査報告書など)の保存の状況が重要事項説明の対象になります。管理受託の際に、どこに何があるかを聞いておきます。
- 第2回(12月7日)の資料を確認する。資料と議事要旨は国土交通省の検討会のページに掲載されます。とりまとめ案に賃貸住宅や管理業者に関わる記述が入るかどうかは、その時点で確かめます。
まだ決まっていないこと
- どの制度を、どう見直すのか(法改正をするかどうかを含む)
- 見直しがあるとして、いつから施行されるのか
- 賃貸住宅や賃貸住宅管理業者が対象に入るのかどうか
- 住宅履歴情報について、何を・誰が・どの方法で保存するのか
第1回の資料は検討の方向性の「案」で、結論は示されていません。
よくある質問
Q1. いつから何が変わるのですか。
まだ決まっていません。2026年10月8日に第1回が開かれ、12月7日の第2回でとりまとめ案が示される予定です。制度の中身と施行日は、資料には書かれていません。
Q2. 賃貸住宅も対象になりますか。
第1回の「背景・課題と検討の方向性(案)」には、賃貸住宅についての記述は見当たりません。検討事項として示されているのは、既存住宅の取引、維持保全の評価、維持保全情報の保存・活用です。賃貸住宅が対象に入るかどうかは決まっていません。
Q3. 賃貸の重要事項説明でも、建物状況調査について説明が必要ですか。
既存の建物の場合、建物状況調査(実施後1年以内、鉄筋コンクリート造等の共同住宅等は2年以内のもの)を実施しているかどうかと、実施している場合の結果の概要は、貸借でも重要事項説明の対象です(宅建業法第35条第1項第6号の2イ)。書類の保存の状況(同号ロ)は売買・交換に限られます。
Q4. なぜ今、この検討会が始まったのですか。
資料は、新築着工戸数の減少と住宅価格の上昇が進むなかで、一定の質が確保された住宅ストックを長く受け継ぐ環境の重要性が高まっていることを挙げています。改正長期優良住宅法等の施行(令和4年10月)から5年を目途に施行状況等を検証すべきとされていることも、あわせて書かれています。
Q5. 検討会の資料はどこで見られますか。
国土交通省の「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」のページに、第1回の議事次第、委員名簿、現状の資料、検討の方向性(案)、今後のスケジュール(案)が掲載されています。議事要旨は後日公開とされています。
出典(本文で参照している資料)
- 国土交通省 報道発表「「第1回 住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」の開催について」(2026年10月2日)
- 国土交通省「住宅の維持保全・流通に関する制度検討会」(第1回資料の掲載ページ)
- 資料1-2 住宅の維持保全・流通に関する制度検討会について
- 資料2 住宅の維持保全・流通に関する現状について
- 資料3 背景・課題と検討の方向性(案)
- 資料4 今後のスケジュール(案)
- 宅地建物取引業法(第34条の2、第35条)e-Gov法令検索
- 宅地建物取引業法施行規則(第16条の2の2、第16条の2の3)e-Gov法令検索
この記事は 2026-10-12 時点の情報です。