国土交通省は2026年10月2日、「令和7年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果」を公表しました。令和8年3月末の宅地建物取引業者数は133,727業者で12年連続の増加、令和7年度の監督処分は163件(前年度比16件増)、文書による行政指導は768件(同176件増)です。業務停止は16件から36件へ2倍超になり、業務停止の主な違反として最も多く挙がったのは法第35条(重要事項の説明等)でした。出典は国土交通省の報道発表です。本稿は、公表された数字と、賃貸の仲介・管理の現場で見直すことを整理します。
結論
- 宅建業者は133,727業者(令和8年3月末)。前年度より1,436業者(1.1%)増え、12年連続の増加です。法人は増え、個人は減っています。
- 監督処分は163件。免許取消85件(14件減)、業務停止36件(20件増)、指示42件(10件増)です。
- 行政指導は768件(176件増・29.7%増)。うち勧告が556件(前年度419件)、指導・助言が212件(同173件)です。
- 重要事項の説明(法第35条)は、業務停止で9件、指示で9件と、どちらでも主な違反の最多に入っています。法第35条は賃貸(貸借)も対象です。
- 処分が増えた理由は、資料には書かれていません。賃貸と売買に分けた件数も公表されていません。
発表の中身
この調査は毎年、国土交通大臣免許と都道府県知事免許の業者について、免許・立入調査・監督処分・行政指導の実施状況と、宅地建物取引士の登録者数をまとめたものです。令和7年度分の要点は次のとおりです。
業者数と宅建士の登録者数
令和7年度末(令和8年3月末)の業者数は133,727業者で、大臣免許3,238業者、知事免許130,489業者です。参考資料の過去20年の推移で見ると、平成18年度末の130,647業者を上回っています。宅地建物取引士は年度中に34,714人が新たに登録し、総登録者数は1,243,738人(約124万人)になりました。
| 項目 | 令和6年度末 | 令和7年度末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 宅建業者数 合計 | 132,291 | 133,727 | +1,436(1.1%) |
| うち大臣免許 | 3,158 | 3,238 | +80(2.5%) |
| うち知事免許 | 129,133 | 130,489 | +1,356(1.1%) |
| うち法人 | 119,902 | 121,747 | +1,845 |
| うち個人 | 12,389 | 11,980 | -409 |
| 宅建士 総登録者数 | 1,209,726 | 1,243,738 | +34,012 |
| 宅建士 新規登録者数(年度中) | 30,336 | 34,714 | +4,378 |
法人・個人の内訳と前年度との差は、報道発表資料の表から本稿が計算したものです。
監督処分と行政指導の件数
監督処分は、宅建業法に基づく免許取消・業務停止・指示の3種類です。行政指導は、法第71条に基づき文書で行った指導・助言・勧告の件数です。直近5年は次のとおりです(大臣+知事)。
| 区分 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 | 令和7年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 免許取消 | 93 | 63 | 97 | 99 | 85 |
| 業務停止 | 27 | 38 | 33 | 16 | 36 |
| 指示 | 42 | 38 | 37 | 32 | 42 |
| 監督処分 計 | 162 | 139 | 167 | 147 | 163 |
| 行政指導 | 627 | 528 | 531 | 592 | 768 |
10年で見ると、監督処分は平成28年度の251件から減ってきており、令和7年度の163件は令和5年度の167件とほぼ同じ水準です。一方、行政指導768件は過去10年で最も多い件数です。
どの条文で処分されたか
参考資料には「監督処分における主な違反(令和7年度/大臣+知事)」として、処分の種類ごとに主な条文と件数が載っています。賃貸の仲介・管理に関係するかどうかの欄は、条文の対象範囲から本稿が書き加えたものです。
| 処分 | 条文 | 内容 | 件数 | 賃貸の仲介・管理との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 免許取消 | 法第67条第1項 | 事務所不確知 | 56 | 事務所の所在地が分からなくなった業者。賃貸か売買かを問いません |
| 免許取消 | 法第5条第1項 | 免許の基準等 | 23 | 欠格事由に当たった業者。賃貸か売買かを問いません |
| 免許取消 | 法第25条第7項 | 営業保証金の未供託 | 4 | 保証協会に入らず営業保証金を供託する業者が対象 |
| 業務停止 | 法第35条 | 重要事項の説明等 | 9 | 貸借も対象。賃貸の重説もここに入ります |
| 業務停止 | 法第34条の2 | 媒介契約 | 7 | 売買・交換の媒介が対象。賃貸の媒介は対象外 |
| 業務停止 | 法第31条の3第3項 | 専任の宅地建物取引士の設置 | 4 | 事務所ごとの人数。賃貸だけの店舗も対象 |
| 指示 | 法第34条の2 | 媒介契約 | 9 | 売買・交換の媒介が対象 |
| 指示 | 法第35条 | 重要事項の説明等 | 9 | 貸借も対象 |
| 指示 | 法第31条の3第3項 | 専任の宅地建物取引士の設置 | 6 | 賃貸だけの店舗も対象 |
| 指示 | 法第65条第1項第2号 | 取引の公正を害する行為 | 6 | 賃貸か売買かを問いません |
免許取消の多くは、事務所の所在地が分からなくなった業者に対する法第67条第1項の取消し(56件)です。この条文では、所在地を確知できないときに官報または公報で公告し、公告の日から30日を経過しても申出がなければ免許を取り消すことができます。営業の実態が無くなった業者の整理という性格が強い処分です。
業務の中身に関わるのは業務停止と指示です。ここでは法第35条(重要事項の説明等)、法第34条の2(媒介契約)、法第31条の3第3項(専任の宅地建物取引士の設置)が並んでいます。このうち法第34条の2は「売買又は交換の媒介の契約」が対象で、賃貸の媒介には当たりません。法第35条は「売買、交換若しくは貸借」が対象で、賃貸の重要事項説明も含みます。
賃貸管理の実務で何をするか
今回の発表で新しい義務が生まれたわけではありません。処分の多い条文は、どれも以前からある義務です。賃貸の仲介や管理をしている会社が、この機会に見直せることを5つ挙げます。
- 賃貸の重要事項説明の控えを、数件抜き出して読み直す。法第35条は業務停止・指示のどちらでも主な違反の最多です。説明した宅地建物取引士の記名があるか、交付した日と相手が分かるか、物件ごとに必要な事項が埋まっているかを確かめます。
- 事務所ごとに専任の宅建士の人数を数え直す。施行規則第15条の5の3により、事務所では業務に従事する者の5分の1以上が必要です。退職や異動で足りなくなったときは、法第31条の3第3項により2週間以内に必要な措置を執らなければなりません。繁忙期の前に人の出入りを確かめておくと安心です。
- 免許の登録内容が今の事務所と合っているかを確かめる。免許取消で最も多いのは事務所不確知でした。移転や役員の交代をしたのに届け出ていない状態は、行政から連絡が取れない原因になります。届け出た内容と現在の所在地・役員・専任の宅建士の名前を照らし合わせます。
- 売買の媒介も扱う会社は、媒介契約書面の交付を確かめる。法第34条の2は業務停止7件・指示9件です。賃貸中心の会社でも、オーナーから売却の相談を受けて媒介する場合はこの条文の対象です。
- 文書で指導を受けたら、指摘事項と直した内容を記録に残す。行政指導は監督処分ではありませんが、令和7年度は勧告だけで556件ありました。同じ指摘を繰り返さないために、何を言われ、いつ何を直したかを社内で残しておきます。
賃貸の重要事項説明書の下書きは、ウルスタくんの書類作成で作れます。説明と記名は宅地建物取引士が行います。
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資料に書かれていないこと
- 業務停止や行政指導が増えた理由は、報道発表資料・参考資料のどちらにも書かれていません。
- 賃貸の取引と売買の取引に分けた処分件数は公表されていません。
- 個別の処分を受けた業者名は、この調査には載っていません。各処分は国土交通省や都道府県がそれぞれ公表しています。
- 賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)に基づく処分は、この調査の対象外です。
よくある質問
Q. 賃貸の仲介しかしていない会社にも関係がありますか。
関係があります。法第35条(重要事項の説明等)と法第31条の3(専任の宅地建物取引士の設置)は、賃貸だけを扱う会社にも適用されます。一方、法第34条の2(媒介契約)は売買・交換の媒介が対象で、賃貸の媒介には適用されません。
Q. 行政指導と監督処分は何が違いますか。
監督処分は宅建業法に基づく指示・業務停止・免許取消です。行政指導は法第71条に基づく指導・助言・勧告で、今回の調査では文書で行ったものを数えています。令和7年度は監督処分163件、行政指導768件でした。
Q. 宅建業者の数はどこまで増えていますか。
令和8年3月末で133,727業者です。12年連続の増加で、参考資料にある過去20年の推移の中では最も多い数です。法人が増え、個人は減っています。
Q. 専任の宅建士が退職したら、いつまでに補充しますか。
法第31条の3第3項で、既存の事務所が人数の要件を満たさなくなったときは、2週間以内に必要な措置を執らなければなりません。人数の要件は、事務所で業務に従事する者の5分の1以上です(施行規則第15条の5の3)。
出典
- 国土交通省「令和7年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について」(2026年10月2日)
- 同 報道発表資料(PDF):業者数・監督処分・行政指導・宅建士登録者数の推移
- 同 参考資料(PDF):監督処分における主な違反、勧告と指導・助言の内訳、業者数の過去20年の推移
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第25条・第31条の3・第34条の2・第35条・第65条・第67条・第71条)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第15条の5の3)
本稿の整理:「賃貸の仲介・管理との関係」の欄、法人・個人の増減、「賃貸管理の実務で何をするか」は本稿の整理であり、公表資料そのものの記載ではありません。
この記事は 2026-10-11 時点の情報です。
